aVin(アヴァン)は南仏のローヌ&プロヴァンス地方からワインを輸入し、販売しているお店です。南仏の文化、アート、暮らし、ワイン、そしてつくる人たちの情報を発信します。

「コート・ロティ」ローヌの新たな選択肢2017/11/17

april 2016 Cote Rotie photo vines

 

1980年代一時は消失の危機を迎えたローヌ北部コート・ロティは、今日最も繊細なシラーのワインを産出する地と変貌と遂げた。現在フランス国内のシラーの売上の70%シェアを誇る。

 

「ラ・コート・ロティ 焼け付く大地」

数年に渡って他のいかなる醸造所よりも優れた味の進展を見せた地である。

 

90年代、かつてこの地の多くのワインが、ワインの持つ若々しさ、男性的な強さ、木の香りのニュアンスや動物的な香りを強調していた時代があった。しかし今日、アンピュイ周辺で作られるワインにはより厳選された特性が見受けられる。その果実の爽やかな味わいはまるで輝いているかのように魅力的で、ブルゴーニュのピノ・ノワールを感じさせる。そして何より特筆すべきはラ・コート・ロティ全体の品質のレベルが安定し優れた水準を保っていることである。

 

80年代からのレコンキスタ(復活)

技術面において、ワイン醸造(アルコール発酵)の工程は穏やかなものとなっている。多くの醸造所が過度のピジャージュ(PIGEAGEタンクや大樽内で発酵中ブドウの皮の層を上下に攪拌すること)を控えるようになった。

ワインの成功のもとがヴァンダンジュ・アンティエール(VENDANGES ÉNTIÈRES ブドウ収穫後、茎ごと圧搾し発酵すること。通常は青臭さやエグミを避けるために取り除かれるが、茎にもタンニンが含まれるためワインの寿命は長くなる。ロマネ・コンティもこの製法で作られる)によるところも大きい。アンピュイ村のドメーヌ・ジャメ、ギガルなどは他の製造所にもこの技法を伝えている。白ブドウ種やヴィオニエには糖分が多く、従来補糖(シャプタリザシオン)に用いられてきた。こうした品種は1940年代には2割を占めていたが、2016年には5%以下にまで抑えられるようになった。結果、バイオレットのニュアンス、血色の表層には芳香族化合物のアロマが加わる。シラー種の栽培と熟成には北の限界線と言われるこのアペラシオン特有のメリットを生かしているのだ。そうしてついにコート・ロティはエルミタージュの多くのものよりもよりフレッシュで落ち着いたスタイルを獲得したのである。

 

なんという長い道のりだっただろう。

信じがたいことにコート・ロティは一時消失の危機にさらされたのである。

 

「私たちのアペラシオンは世界大戦後、非常に深刻な時期を迎えました」

 

そう語るのは、フィリップ・ギガル氏。この地でも過疎化の問題が急激に広がり、農業を諦める人が大勢増えた時期、多くの畑が放棄されることとなった。地獄のような悪循環からなんとか脱するために、誰かが立ち上がったのがエティエンヌ・ギガル。ヴィダル・フールリー社の雇い職人だった彼はコート・ロティの持つ潜在能力に賭けて50年代に企業し、ブドウ苗を購入、栽培から全てをスタートさせた。それはやがて息子のマルセルへと受け継がれる。

 

50年に渡る努力は次第に実を結び始め他の醸造所クルーゼル、ジャメ、ビュルゴー各社が続く。70年代末、コート・ロティは50ヘクタールのブドウ畑を管轄していたが、1989年には2倍の100ヘクタールに増加し1914年以前の状態に戻り、2000年初頭には200ヘクタール、今日では300ヘクタールのブドウ畑が3つのエリア(アンピュイ、サン・シール・ル・ローヌ、テュパン・エ・セモン)で栽培されている。

 

コート・ロティは正確には2つの区画に区分される。ラ・コート・ブリュンヌとラ・コート・ブロンドと呼ばれそれぞれに土地の特徴がある。

 

コート・ブリュンヌ

コート・ロティのアペラシオン内北部にあたるサン・シール・ル・ローヌとアンピュイ。

アペラシオン全体の3分の2を占めるコート・ブリュンヌは粘土層と結晶片岩の土壌を持ち、土の色はより濃い。コート・ブリュンヌを象徴するテロワールは、レ・グランド・プラス、ランスマン、コート・ロジエ、そして有名なランドンヌ。これらは4つのドメーヌ「ロスタン」「ゲラン」「ギガル」「ドゥラス」で製造がされる。ここで生まれるワインはしっかりとしたストラクチャーを持ち、タンニンが効いた力強い印象を与える。

 

コート・ブロンド

アンピュイから南へテュパン・エ・セモン、アペラシオン・コンドリューの境界線にかけて広がるのがコート・ブロンド、花崗岩質の白い土地。土の色は明るく、ここで最も知られるのは南部のメゾン・ルージュやコトー・ド・バスノンだろう。コート・ブロンドのワインはよりまろやかで優しい味わいを持つのが特徴で若いうちから楽しめる。ここではヴィオニエも作られる。

 

april 2016 Cote Rotie map

 

“リュー・ディの区分によるキュベの増加は、ワインの多様性というものに大いに貢献するのです”

 

「リュー・ディ lieu-ditとはフランスで土地台帳が創設されて以来、その名を地形学あるいは歴史的な特性に由来する土地の小さな区画を指し、“ブルゴーニュ”といった土地の性質ではなく、土地の所有者による土地の登録に該当する。」

ドメーヌ・ジョルジュ・ヴェルネのクリスティーヌ・ヴェルネは説明する。アペラシオンの中でも優れたリュー・ディによるより細かな階級化がされる日は来るのだろうか。そうなればコート・ロティの可能性はますます期待されるものになるだろう。

 

偉大なるダイナミズム

ミシェル・シャプティエ氏により、私はコート・ロティの進展がまだ始まりの段階であることに気づかされた。ブドウ畑の土は年々熟成し、新たな植え付けの際には必ず改善策が施される。他と比べてビオワインの普及に遅れが見られるのは、コート・ロティがローヌ南部の地より湿度が高いせいであり、また若い世代の者たちはこれからできるだけ早く有機農法に着手しなければならないことを認識している。特に2013年のワインは非常に美味であり、豊かな芳香にあふれた仕上がりとなっている。変化を恐れず見事に宙へと飛び込むダイナミズムである。(フィリップ・モーランジュ)

M・シャプティエ社は1808年、ボルドーに次ぐフランス第2位のA.O.Cワイン産地のコート・デュ・ローヌ、エルミタージュの丘で創業したローヌ地方を代表するワイナリー。7代目現社長のミシェル・シャプティエ氏に至るまで、家族経営のもとテロワールを大切に守り品質の高いワインを造り続けている。

 

ドメーヌ・ジョルジュ・ヴェルネ

クリスティーヌ・ヴェルネ氏、赤ワインのセンシュアリティ(官能性)について語る

コンドリューにあるジョルジュ・ヴェルネはコート・ロティに6ヘクタールのブドウ栽培地を保有する。3つのリュー・ディを保有し、コート・ブロンドのメゾン・ルージュでは古株から特徴的なキュベを作っている。ランスマンとコトー・ド・バスノンではブロンド・ド・セニュールのためのシラーと5%のヴィオニエを栽培する。

「今後はシラーの熟成により一層力を入れていきたいと思います。従来よりワインの熟成期間を長くさせ、ブロンド・ド・セニュールは18ヶ月、メゾン・ルージュは完成までに24ヶ月かけています。こうすることで私たちの赤ワインの良さが現れて来るのです。」

シラーの持つ深い魅力的な味わいと、造り手の感性を求める長期熟成が合わさり、ここに一つの美しい調和が誕生したのだ。

 

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La Revue du Vin de France No.600 2016年 4月号

 

著:フィリップ・モーランジュ、ロベルト・ペトロニオ

www.larvf.com.

翻訳 橋井杏


ワインと水の関係 「ジュテーム、モワ ノンプリュ」2017/9/29

愛しているよ。うん 私も愛してない。

 

 

葡萄の果汁が発酵する神秘

 

果実に含まれる酵素が複雑で甘美な、そして幸福感をもたらす飲み物を生み出す。

 

地中から葡萄の樹木によって吸い上げられた大量の水、数えきれない土のミネラル成分が混じり合い、そしてさらに葡萄の糖分が醸造によってアルコールへと変質していく過程によってつくられる香りと風味が加わる。これらが表現するものは、テロワールの性質に他ならない。

ワインを造るには雨水や灌漑用水だけでは足りず、むしろ醸造場やカーヴ、機械類…これら全てを常に使えるよう清潔に保っておくための大量の水が欠かせないのである。

 

しかしながら水というものがいかに高潔であると言われても、ブドウ栽培者たちが使用量を増やしている化学肥料の中には、水脈や地下水にとって無害とは言えないものが少なからず存在している。

 

品質の高いワインを造るには、専門性とその販路を開拓することが必要である。都市部の市場の近くに拠点を持つこと、またそうした市場にたやすく出入りするための関係の構築が欠かせないのである。

例えばローヌ、ガロンヌ、サオーヌ、セーヌ、ライン、ドナウ、といった河川のように、古代ギリシャ時代から大都市や港町以外の河川の周辺地域でワイナリーを構えることは、大手のワイン生産者にとってワインを船で運ぶ面から大きな役割を果たしていた。このように河川周辺に存在したワイン生産者たちは、何世紀にも渡り蓄積した知識と経験によって、今でも旧大陸(ユーラシア)における優れたワインを造り続けている。

 

ワインと水のもうひとつの関係性を取り上げてみたい。

 

ワインと水の混合、フランスの諺にMettre de l’eau dans son vin《ワインに水を混ぜる》というのがある。

 

地中海周辺域にあった文明、ヘブライ、ギリシャ、ローマなどに見られる、純粋なワインを飲みすぐに深酔いする野蛮な古くからの慣行を打ち破る諺であった。

 

そもそも当時は純粋と呼べるワインはほとんどなく、ワインに含まれる大量の添加物や保存料は体を重く感じさせ、頭痛をもたらしたのであったからワインに水を混ぜる行為は少なくとも二十世紀の終わりまで多くのヨーロッパ人にとって馴染み深いものとなった。ルイ14世やナポレオン皇帝でさえ、ヴォーヌ・ロマネやシャンベルタンに水や氷を足して飲んでいたのである。

 

ヨーロッパで最初に純粋なまま飲まれたのは一七世紀の終わりのイギリス、それも発泡性のシャンパーニュであった。フランスでは一八世紀初頭のオルレアン公フィリップによる摂政時代以降となる。随分と昔から、意地の悪い商人たちはワインに水道水を混ぜて利潤をあげようと考えてきたのであるが、カリフォルニアではそれはワインのアルコール度数を下げるという面から合法となっている。この許されざる重罪は今でも完全には無くなっていない。ブルゴーニュでは一人の商売人の不正行為が厳しく裁かれたことがあった。酌量の余地もないことであろう。

 

 

かつてワインと水を混ぜていたといわれるアンフォラ(つぼ)

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ジャン=ロベール・ピット

(ソルボンヌ大学教授・地理学者、フランス・ワインアカデミー会長)

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Mettre de l’eau dans son vin. 酒に水を割る
興奮をさまし、激しい決意を和らげ、中庸の域に戻ること
ぶどう酒に水を割って薄めて飲むことはギリシャ人の発明で、ギリシャ人はこれを神意にもとづく結構なことだと思い、「バッカスの激しさを水の精との交わりによって静める(プルタルコス)」とか「酒乱の神を下戸の神によってなだめる」(プラトン)」とか言った。

白水社田辺貞之助編「フランス故事ことわざ辞典」

 

La Revue du Vin de France No.605 2016年 10月号

www.larvf.com.

翻訳 橋井杏

 

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ローヌワインの愛好家はこの10年間に5割増加!2017/9/14

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フランスワイン雑誌「La Revue du vin de France」より

 

フランス国内において
ローヌワインの愛好家はこの10年間に5割増加!

 

今週末の3連休は
あなたもぜひ南仏のローヌワインを選ぶ勇気を持って!!

 

北ローヌのエリア名をいくつか挙げるなら・・・
コンドリュー、サンペレ(白)、コートロティ、コルナス、エルミタージュ、サンジョセフ(赤)・・・
ローヌ川を下りながら、思い浮かべていますが
飲みたいものがつきません。

 

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南ローヌなら
コートデュローヌ、シャトーヌフデュパプ、ジゴンダス、ヴァケラス、リュベロン、ヴァントゥー(赤)タヴェル(ロゼ)・・
白もわずかにあります。

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気軽~に飲むものから、エレガントなものまで

Discover Rhone !!!!

 

★ローヌ&プロヴァンスワインの店aVin(アヴァン)では
9/14(木)から原宿で週1日だけ、南仏ワインバーも始めます!
南仏ワインをグラスでぜひ♪
http://avin.jp/event/1331

 

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フランスではボルドーに次ぐ生産量を誇る南仏ローヌワイン。

近年確実にその人気を集めており、10年前と比べその消費量は49.4%増大している。

ヴァレ・デュ・ローヌの希少性は広く認知され、オークションでも価格はコンスタントに成長を続けている。

北ローヌでは、コートロティのギガル御三家がさらなる伸び。ラ・ランドンヌ2005年とラ・ムーリーヌ2005年はそれぞれ408ユーロ、384ユーロとなっている。

南ローヌのシャトーヌフ・デュ・パプに至っては、ペゴー社が際立って評価を高めており、2000年度のキュベ・ダカーポはマグナムサイズで744ユーロ、2007年度のボトルで300ユーロとなった。

またシャトー・ラヤスとボノー社の二大巨頭も忘れてはならないだろう。

 

La Revue du vin de France no.607/dec 2016-jan 2017記事抜粋
www.larvf.com.
翻訳 橋井杏

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「新しい世代はこれからもワインを愛するだろうか?」2017/8/31

La nouvelle génération aimera-t-elle le vin ?

 

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著)La RVF編集長ドゥ二・サヴェロ(Denis Saverot)

La Revue du vin de France no.607/dec 2016 – jan 2017 記事抜粋

 

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「若年層とワインの離婚のリスクはあるのか」

 

先日パリで開かれた、ワインとその新技術に情熱を寄せる若き人々の集い

「ヴィノキャンプ(Vinocamp)」で交わされた話題の一つです。

 

会が開かれたメゾンドメタロス(Maison de Métallos)はパリの社交場的存在で、過激派のモスクがあるピエール=ティボー通りからすぐ隣に位置します。この日私は初めて、軍の警備と拳銃の保護のもとでの緊張感漂う会議に招かれていました。ところが場内は一転、穏やかな雰囲気に包まれたワイン会議となりました。

 

フランスでの18~30歳までの若い世代の10人に7人がワインを口にすると明言しても、その中でほぼ毎日飲むという人は1人にも満たないでしょう。10人中3人が週2、3回、もう3人はごく稀に、そして残り3人は全くワインを飲まないという統計となり、若者世代において食前酒にワインを選ぶのはたった12%のみとなりました。

 

広報担当で富裕層の専門家であるエリック・ブリオンは、若い世代の目からはワインの世界が厳格で保守的に見えてしまっていると説明します。そしてY世代(1980−2000年の間に生まれた世代)、彼が呼ぶには「ワインハッカー世代」達をより惹きつける為にSNSの力がなくてはならないと言います。ブリオン氏によると、ワイン製造者は成功のためブランド戦略と同様、若い世代のしもべに位置しなければならないそうなのです。即興的で、形式にはまらない、一時的な楽しみ、そうしたことが若い世代にとって最も親しまれるのです。YouTubeで栓抜きを使わずコルクを抜き取る動画が800万回視聴されたことはブリオン氏にとって大変な驚きだったそうです。

 

フランス世論研究所は、若い消費者世代に関するより詳細な調査を行なっています。研究所所長のジェローム・フーケ氏は会議においてこの微妙なニュアンスを解説してくれました。研究所の見解によると、フランスの若年層世代の63%がワインは家庭内で学ぶものと考えているそうです。ワインのことを知るために40%の人が身近な人から意見を聞き、28%がワイン売り場の人から、27%が友人から、そしてたった19%がインターネットから、7%がワイン専門のアプリから学んでいることがあきらかになりました。フランスというブドウ栽培の伝統がある国では、若い世代がインターネットの情報に信頼を寄せ自分の知識として語ることはしないのです。

 

とくに、アンケート調査では若い世代に30%存在する非ワイン消費者の内の66%が、ワインを飲まない理由に「味が苦手だから」を選んでいます。ここで明らかにしておきたいことには、ワイン愛好家達が認識している通り「ワインは文化的飲み物である」ということなのです。その習慣は自然発生的に生じるのではなく、文明の中で脈々と受け継がれてきた遺贈として現代に存在しているのでしょう。生まれつきワインが好きな子供はいません。ワインを味わう楽しみは生涯を通じてゆっくり身についていくのです。

 

結果として、こうした習慣が無くなればワインの消費量は激減します。

フランス世論研究所によると、12%の若年層世代は家庭においてワインを飲むことはなく、7%はその宗教的理由から決して口にしないそうです。千年以上にわたりフランスでは歴史や宗教の断絶問題に対し、とくに自由思想家などは食卓でのワインの共有を提唱してきたことは象徴的です。

 

人々はみなフェイスブックやツイッターのアカウントは持っています。しかし本心では真の共生に立ち返りたいのです。人々と出会い、交流をかわすことを求めています。

 

仲間と共有し、一生記憶に残る思い出を持ちたいと。それは若い世代も同じことです。

 

ワインの文化とはすなわちパルタージュ(共有)とランコントル(出会い)なのです。

 

La Revue du vin de France  no.607/dec 2016 – jan 2017 記事抜粋

www.larvf.com.

La RVF編集長ドゥ二・サヴェロ

翻訳 橋井杏

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シャトーヌフ・デュ・パプの見聞録をお届け2017/7/16

シャトーヌフ・デュ・パプでは、それぞれの醸造所が伝統的なワイン作りに日々励んでいる。

 

しかし同じ場所で、古株のブドウ樹やシャトーヌフ・デュ・パプに典型的なグルナッシュを用いずに作られる特別なワインが存在することをご存知だろうか。ローヌの「色彩豊かなパレット」から届く推薦ワインをご紹介したい。

 

La Revue de Vin de France n°585 記事抜粋
(ロベルト・ペトロニオ 著)

 

記事⑤2

 

地表を覆う小石と13品種からなるブドウ畑のパッチワークは、シャトーヌフ・デュ・パプと聞いてイメージする時に、最初に浮かぶ風景だろう。

 

アペラシオン(AOC)とは、フランスにおける法律に基づいたワインの産地を示す呼称であり、シャトーヌフ・デュ・パプはその中でも古くから指定されている(1923年)。ローヌ川から押し流され磨かれた小石が覆う地帯であるだけではなく、独自の方式で管理された多様な魅力を持つこの地。

まずはその自然豊かな土壌から見てみよう。この地の土壌は深部から、粘土質、砂岩、砂、小石、そしてさらに大きな石灰石という構成になっている。深さによって地質学的に変化があることにより、貯水としての性質を備え、乾季にも対応できるだけの水を保持することが可能となる。

 

AOCシャトーヌフ・デュ・パプ内の北東部に位置するクルテゾン地域では、粘土層が厚く、ブドウ開花に最適な条件を与えてくれる。有名なシャトー・ド・ボーカステルやドメーヌ・ド・ラ・ジャナスの区画である”Coudoulet”(クードレ)も同様である。

 

 

 <La Crauラ・クロー高地(区画)>

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ブドウ畑が丘陵のどこに位置しているかが全てを決定づける。またテロワールの違いを明確にする。まさにラ・クロー高地南部は、太陽をいっぱいに浴び深みを帯びたワインの要であり、シャトーヌフ・デュ・パプの最も優れたテロワールの一つに位置付けられている。(ドメーヌ・デュ・ヴュー・テレグラフ)しかし最近では、気象変動によりラ・クロー北部で造られるドメーヌ・ピュイ・ロランなど実際よりもかなり低く位置付けされていたワインに大きな可能性が生まれてきている。

 

続いてブドウ品種について見てみよう。

 

77%をグルナッシュが占めており、13種(グルナッシュノワール、シラー、ムールヴェードル、サンソー、クノワーズ、ミュスカルダン、ヴァカレーズ、ピクプールノワール、テレノワール、クレレット、ルーサンヌ、ブールブラン、ピカルダン)のブドウ畑がAOCで認定されているが、正確に言えば18品種が存在し、グルナッシュグリ、グルナッシュブラン、ピクプールグリ、ピクプールブラン、クレレットブランが栽培されている。

 

これこそがシャトーヌフ・デュ・パプの独自性と優れた点の源流である。

 

 これらの品種によるアサンブラージュは限られたブドウ樹から、かつAOCにより限定された範囲で行われている(南ローヌ地域のその他AOCではこの多様なアサンブラージュは認められていない)その一方で、シャトーヌフ・デュ・パプを一種のブドウのみで造ることも可能である。グルナッシュ100%、ムールヴェードル100%、あるいはシラー100%のシャトーヌフ・デュ・パプも存在する。ここでご紹介したいのはこの広大なブドウ畑(ワイナリー)のこうした特殊な側面なのである。

 

訳者追記:フランス語には、ワイナリー(醸造所=ワインをつくる場所)という言葉はありません。私たちがいう「ワイナリー」を意味したいときは、「ヴィニョーブル vignoble (ブドウ畑)」というしかないのです。つまり、ブドウ畑のあるところがワインをつくるところというわけです。逆にいえば、ブドウ畑がどこにもなくて、ただワインをつくる工場だけが存在する、ということはあり得ないことになります。

 

 

<キュベ “tradition”トラディション と”speciales” スペシャル >

各々のドメーヌではトラディション(伝統)と呼ばれるキュベを生産、毎年丹精込めて作られるこの伝統的な製造法によるワインがドメーヌのスタイルを表す顔となる。

いくつかのドメーヌでは“トラディション”しか作らないというこだわりを持つところもある(クロ・デ・パプ、ドメーヌ・シャルヴァン、ドメーヌ・ド・ヴィルヌーヴ等)

 

その一方で、“スペシャル”と呼ばれるカテゴリーのキュベが存在する。

 

そのドメーヌの中でもより高いランクに位置づけられ、かつブドウの出来の良い年にしか製造されない。ドメーヌ・ド・マルクーなどの選別された樹齢の高いブドウ樹からのものであったり、ドメーヌ・ド・ラ・ロケットのキュベ ピエ・ロンなどの特別なある一区画の畑からであったり、またムールヴェードル種をふんだんに用いたドメーヌ・ド・ボワ・ド・ブルサンのキュベ デ・フェリックスなど。“トラディション”とは異なるブドウ品種やブレンドを用いて作られるものがキュベ“スペシャル”だ。

 

 

<15ユーロから買える偉大なワイン>

シャトーヌフ・デュ・パプをテイスティングしていくと、ここで作られるワインがいかに特別であるかがわかってくる。

例年顧客の希望に合わせ、よりフレッシュで飲みやすくなるよう改善を加えるラ・ジャナスやサン・プレフェールなどは、収穫を遅らせることによりワインのタンニンがよりまろやかになるよう工夫している。特に、長期保管をせず作られてからすぐ開栓する場合は大変良い方法である。私の場合、グルナッシュの繊細さが好みであり、またシラーの直線的で新鮮な味わいよりも、正直で厳格さすら感じられるムールヴェードルに惹かれてしまう。

しかしながら、特にアメリカの市場の影響もあって多様なスタイルが共生しているのである。アメリカでは少し甘めに造られるシャトーヌフが好まれる。

シャトーヌフ・デュ・パプには品質と手頃な価格の良い関係が築かれている。15〜40ユーロの価格で非常に豊富な種類が用意されているからである。一方、100ユーロのシャトーヌフ・デュ・パプの中には、その4、5倍の値段で売られるボルドーやブルゴーニュを凌ぐものがあることもここに記しておきたい。

 

 

<シャトーヌフ=デュ=パプ 2012ヴィンテージ品評会>

Domaine de la Vieille Julienne
ドメーヌ・ド・ラ・ヴィエイユ ジュリアン
Les Hauts-lieux レ・オゥ・リュ

17/20点

例年は5%しか用いないムールヴェードルを2012年には20%使用。炭のようなドライな香りがとても強く、濃厚でありながらも熟した果実に似た柔らかさを感じる。ムールヴェードルの構成が、口の中で角張った印象を与えつつ、土台のしっかりとした美しい味わい。
年間生産本数:4800本

 

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<適温・・そしてマリアージュ>

シャトーヌフ・デュ・パプの裏面のラベルに「適温18℃、組み合わせにはジビエや赤肉料理」と書かれたものを見かけることは稀ではない。しかし、18℃はシャトーヌフ・デュ・パプにとって高すぎる温度であり、まるで火が通りすぎたステーキを食べるのと同じことである。
14℃くらいでサーブし、食事の間に少しずつ室温に慣らしていくのが良いだろう。

 

しかしそれ以前に、シャトーヌフ・デュ・パプを飲むためにジビエの季節が到来するのを待つよりも、もっとこのワインを一年中楽しむための良い方法があるというのに、

なんという悲劇だろう!

シャトーヌフ・デュ・パプの寛大で強さのある味わいは、地中海料理とも非常に相性が良いのである。このことを証言してくれたのが元ミシュランの星付きレストランの料理人で現在ワイン製造者となったジェローム・グラダシィ氏である。

彼のレシピは?「ルジェの赤ワインソース仕立て」ルゥ・ブランと呼ばれる小麦粉とバターで香ばしく炒めたつなぎを用いる、伝統的ながらも軽やかさを持つソースである。その香ばしさと濃縮されたワインの味わいは魚との相性抜群。

フレッシュで重すぎない年数の浅いシャトーヌフ・デュ・パプを選ぶことがポイントである。

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<温暖化に対応するブドウ苗>

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どうすれば地球温暖化による気象変動に対抗できるのか。60年台後半、シャトーヌフの製造者たちはシラー種の中にアルコール度数を下げる驚くべき解決法を見出した。しかしながら気温の上昇に伴い、ブドウがやや熟しすぎてしまうことが度々起こった。

ドメーヌ・ド・ラ・ジャナスのクリストフ・サボン氏はかの有名な13種の苗木を全て植え直すことを考えたのである。

「15年前から、グルナッシュの畑にシラーを植え始め、それを毎年繰り返し行いました。独自の多様さという所に立ち返ってみたいのです。シラーはアルコール分を少なくするが繊細さをもたらします。グルナッシュの間にムールヴェードルというような、白と赤を混合して植えることもしました。」と彼は語る。

今日の傾向は、地下深くに水を蓄えた土壌から生まれるムールヴェードル種によるものである。そこにサンソーやクノワーズといった品種も加わる。そしてまた、セレクション・マサールによりアペラシオンの基準に即したグルナッシュも復活の兆しが見えてきているのだ。
(訳者追記 ※セレクション・マサールとは、優良クローンぶどうだけではなく、野生品種を1つの区画に植え、色々なタイプのブドウ樹から様々なキャラクターを引き出す古来より伝わる伝統的な手法。)

 

La Revue de Vin de France n°585 2014/10 記事抜粋
ロベルト・ペトロニオ 著 (Roberto Petronio)
翻訳 橋井杏
www.larvf.com.

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