今回はいつもとちょっと志向を変え、フランスの絵画市場について、美術史や南フランスの葡萄畑の景色を織り交ぜながら最新ニュースをお届けします。
印象派、野獣派、立体派…
長きに渡り日陰にあったこれらの美術潮流作品たち。
近年なってようやくブドウ畑の広がるプロヴァンスの田園風景に魅せられた画家たちが、絵画市場にて再び再評価される傾向にある。
著:コリーヌ・ルフォール(Corinne Lefort)
ブドウ畑の風景はこれまで多くの画家たちに偉大なインスピレーションを与えてきた存在です。
今日、こうした有名な作品の多くが、画家たちの創作活動の重要な部分を象徴していると言えるでしょう。1888年、アルルの隣町モンマジュールでヴァン・ゴッホが描いた「赤い葡萄畑」と「緑の葡萄畑」が世界的に知られています。この二作は絵画歴史上初めて「葡萄畑」が表題に用いられた事でも有名です。また、オーギュスト・ルノワールの「カーニュのブドウ畑」は、1908年、地中海沿岸のコレットという街で生まれました。
こうした作品は、単に「ブドウ畑」という枠だけに収まるものではありません。偉大な画家たちが心から愛した南フランスの太陽と色彩の豊かさの中から誕生したものなのです。
パレットの中に世界を作り出した印象派、野獣派、立体派をはじめ20世紀の画家たちは、芸術史上分類できないユニークさを持っています。
今日、彼らの作品は専門家によって再評価されつつありますが、同じく一般の愛好家たちも特にブドウ畑が広がる風景画に関心があるようです。画家、グラフィックアーティストのイヴ・ブライヤー(1907-1990)が地中海の自然を描いた作品は、ボー・ドゥ・プロヴァンス美術館で展示されています。険しい自然の環境を見つめる彼の特異な視点が表された作品「Paysage de Provence, la vigne en hiver 」(プロヴァンスの風景 冬のブドウ畑)は2016年7月10日にドルオの街で4000ユーロ(約50万円)の値がつきました。
個性的な作風で知られるオーギュスト・シャボー(1882-1955)、別名グラヴソンの修道士は、近年愛好家たちから熱烈に歓迎されつつあります。
第一次世界大戦時に画家として見出された後も、生涯を南仏アルピーユの一軒の農家で過ごしました。彼の作品の中で、葡萄やオリーブの木々が季節風ミストラルによって変形し、風景が時を止めたまま静止しています。「秋の葡萄畑」は2016年4月4日パリ、サン・シールの競売でピエール・コルネット氏により7500ユーロ(約94万円)の値段がつけられました。
2016年のサプライズ:マルセイユの画家シャルル・カモワンの再発見
シャルル・カモワン、マチスの友人
ジャン=バティスト・オリーブ(1848-1936)、ルネ・セイソー(1867-1952)、ルイ=マチュー・ヴェルディラン(1875-1928)達は今日の愛好家たちの関心を呼び起こしています。
しかし、2016年の一番の驚きはやはりマルセイユ出身の画家、シャルル・カモワン(1879-1965)の再発見でしょう。
バール美術館やグラネ美術館で展示され、非常に高い評価を得ました。極上の爽快感とシンプルさ、動きが彼のキャンバスを彩り、古き良き時代のコート・ダジュールにいる喜びを感じさせます。マチスの友人、セザンヌもまた、女性と自然風景に魅了され、その愛をひたすらに絵画へ捧げた一人です。
こうした絵の人気の上昇はとどまるところを知りません。2016年5月22日にはエリック・ピロン氏によりシャルル・カモワン作「サントロペの春の葡萄畑」1943年が38000ユーロ(約480万円)で落札されたばかりです。(完)
– La Revue de Vin de France n°606 2016/11 記事抜粋
著:コリーヌ・ルフォール(Corinne Lefort)
翻訳 橋井杏
Les vendangeurs au puits, Saint-Tropez, 1921, de Charles Camoin (1879-1965)
Huile sur toile, 65*81cm
Prix:25 500 euros
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Galerie David Pluskwa, 304, roue Paradis, 13008 Marseille
Tel:06 72 50 57 31
ローヌ&プロヴァンスワインの店 aVin(アヴァン)