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シャトーヌフ・デュ・パプの見聞録をお届け2017/7/16

シャトーヌフ・デュ・パプでは、それぞれの醸造所が伝統的なワイン作りに日々励んでいる。

 

しかし同じ場所で、古株のブドウ樹やシャトーヌフ・デュ・パプに典型的なグルナッシュを用いずに作られる特別なワインが存在することをご存知だろうか。ローヌの「色彩豊かなパレット」から届く推薦ワインをご紹介したい。

 

La Revue de Vin de France n°585 記事抜粋
(ロベルト・ペトロニオ 著)

 

記事⑤2

 

地表を覆う小石と13品種からなるブドウ畑のパッチワークは、シャトーヌフ・デュ・パプと聞いてイメージする時に、最初に浮かぶ風景だろう。

 

アペラシオン(AOC)とは、フランスにおける法律に基づいたワインの産地を示す呼称であり、シャトーヌフ・デュ・パプはその中でも古くから指定されている(1936年)。ローヌ川から押し流され磨かれた小石が覆う地帯であるだけではなく、独自の方式で管理された多様な魅力を持つこの地。

まずはその自然豊かな土壌から見てみよう。この地の土壌は深部から、粘土質、砂岩、砂、小石、そしてさらに大きな石灰石という構成になっている。深さによって地質学的に変化があることにより、貯水としての性質を備え、乾季にも対応できるだけの水を保持することが可能となる。

 

AOCシャトーヌフ・デュ・パプ内の北東部に位置するクルテゾン地域では、粘土層が厚く、ブドウ開花に最適な条件を与えてくれる。有名なシャトー・ド・ボーカステルやドメーヌ・ド・ラ・ジャナスの区画である”Coudoulet”(クードレ)も同様である。

 

 

 <La Crauラ・クロー高地(区画)>

ChateauneufduPape_map_LaCrau_S

 

ブドウ畑が丘陵のどこに位置しているかが全てを決定づける。またテロワールの違いを明確にする。まさにラ・クロー高地南部は、太陽をいっぱいに浴び深みを帯びたワインの要であり、シャトーヌフ・デュ・パプの最も優れたテロワールの一つに位置付けられている。(ドメーヌ・デュ・ヴュー・テレグラフ)しかし最近では、気象変動によりラ・クロー北部で造られるドメーヌ・ピュイ・ロランなど実際よりもかなり低く位置付けされていたワインに大きな可能性が生まれてきている。

 

続いてブドウ品種について見てみよう。

 

77%をグルナッシュが占めており、13種(グルナッシュノワール、シラー、ムールヴェードル、サンソー、クノワーズ、ミュスカルダン、ヴァカレーズ、ピクプールノワール、テレノワール、クレレット、ルーサンヌ、ブールブラン、ピカルダン)のブドウ畑がAOCで認定されているが、正確に言えば18品種が存在し、グルナッシュグリ、グルナッシュブラン、ピクプールグリ、ピクプールブラン、クレレットブランが栽培されている。

 

これこそがシャトーヌフ・デュ・パプの独自性と優れた点の源流である。

 

 これらの品種によるアサンブラージュは限られたブドウ樹から、かつAOCにより限定された範囲で行われている(南ローヌ地域のその他AOCではこの多様なアサンブラージュは認められていない)その一方で、シャトーヌフ・デュ・パプを一種のブドウのみで造ることも可能である。グルナッシュ100%、ムールヴェードル100%、あるいはシラー100%のシャトーヌフ・デュ・パプも存在する。ここでご紹介したいのはこの広大なブドウ畑(ワイナリー)のこうした特殊な側面なのである。

 

訳者追記:フランス語には、ワイナリー(醸造所=ワインをつくる場所)という言葉はありません。私たちがいう「ワイナリー」を意味したいときは、「ヴィニョーブル vignoble (ブドウ畑)」というしかないのです。つまり、ブドウ畑のあるところがワインをつくるところというわけです。逆にいえば、ブドウ畑がどこにもなくて、ただワインをつくる工場だけが存在する、ということはあり得ないことになります。

 

 

<キュベ “tradition”トラディション と”speciales” スペシャル >

各々のドメーヌではトラディション(伝統)と呼ばれるキュベを生産、毎年丹精込めて作られるこの伝統的な製造法によるワインがドメーヌのスタイルを表す顔となる。

いくつかのドメーヌでは“トラディション”しか作らないというこだわりを持つところもある(クロ・デ・パプ、ドメーヌ・シャルヴァン、ドメーヌ・ド・ヴィルヌーヴ等)

 

その一方で、“スペシャル”と呼ばれるカテゴリーのキュベが存在する。

 

そのドメーヌの中でもより高いランクに位置づけられ、かつブドウの出来の良い年にしか製造されない。ドメーヌ・ド・マルクーなどの選別された樹齢の高いブドウ樹からのものであったり、ドメーヌ・ド・ラ・ロケットのキュベ ピエ・ロンなどの特別なある一区画の畑からであったり、またムールヴェードル種をふんだんに用いたドメーヌ・ド・ボワ・ド・ブルサンのキュベ デ・フェリックスなど。“トラディション”とは異なるブドウ品種やブレンドを用いて作られるものがキュベ“スペシャル”だ。

 

 

<15ユーロから買える偉大なワイン>

シャトーヌフ・デュ・パプをテイスティングしていくと、ここで作られるワインがいかに特別であるかがわかってくる。

例年顧客の希望に合わせ、よりフレッシュで飲みやすくなるよう改善を加えるラ・ジャナスやサン・プレフェールなどは、収穫を遅らせることによりワインのタンニンがよりまろやかになるよう工夫している。特に、長期保管をせず作られてからすぐ開栓する場合は大変良い方法である。私の場合、グルナッシュの繊細さが好みであり、またシラーの直線的で新鮮な味わいよりも、正直で厳格さすら感じられるムールヴェードルに惹かれてしまう。

しかしながら、特にアメリカの市場の影響もあって多様なスタイルが共生しているのである。アメリカでは少し甘めに造られるシャトーヌフが好まれる。

シャトーヌフ・デュ・パプには品質と手頃な価格の良い関係が築かれている。15〜40ユーロの価格で非常に豊富な種類が用意されているからである。一方、100ユーロのシャトーヌフ・デュ・パプの中には、その4、5倍の値段で売られるボルドーやブルゴーニュを凌ぐものがあることもここに記しておきたい。

 

 

<シャトーヌフ=デュ=パプ 2012ヴィンテージ品評会>

Domaine de la Vieille Julienne
ドメーヌ・ド・ラ・ヴィエイユ ジュリアン
Les Hauts-lieux レ・オゥ・リュ

17/20点

例年は5%しか用いないムールヴェードルを2012年には20%使用。炭のようなドライな香りがとても強く、濃厚でありながらも熟した果実に似た柔らかさを感じる。ムールヴェードルの構成が、口の中で角張った印象を与えつつ、土台のしっかりとした美しい味わい。
年間生産本数:4800本

 

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<適温・・そしてマリアージュ>

シャトーヌフ・デュ・パプの裏面のラベルに「適温18℃、組み合わせにはジビエや赤肉料理」と書かれたものを見かけることは稀ではない。しかし、18℃はシャトーヌフ・デュ・パプにとって高すぎる温度であり、まるで火が通りすぎたステーキを食べるのと同じことである。
14℃くらいでサーブし、食事の間に少しずつ室温に慣らしていくのが良いだろう。

 

しかしそれ以前に、シャトーヌフ・デュ・パプを飲むためにジビエの季節が到来するのを待つよりも、もっとこのワインを一年中楽しむための良い方法があるというのに、

なんという悲劇だろう!

シャトーヌフ・デュ・パプの寛大で強さのある味わいは、地中海料理とも非常に相性が良いのである。このことを証言してくれたのが元ミシュランの星付きレストランの料理人で現在ワイン製造者となったジェローム・グラダシィ氏である。

彼のレシピは?「ルジェの赤ワインソース仕立て」ルゥ・ブランと呼ばれる小麦粉とバターで香ばしく炒めたつなぎを用いる、伝統的ながらも軽やかさを持つソースである。その香ばしさと濃縮されたワインの味わいは魚との相性抜群。

フレッシュで重すぎない年数の浅いシャトーヌフ・デュ・パプを選ぶことがポイントである。

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<温暖化に対応するブドウ苗>

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どうすれば地球温暖化による気象変動に対抗できるのか。60年台後半、シャトーヌフの製造者たちはシラー種の中にアルコール度数を下げる驚くべき解決法を見出した。しかしながら気温の上昇に伴い、ブドウがやや熟しすぎてしまうことが度々起こった。

ドメーヌ・ド・ラ・ジャナスのクリストフ・サボン氏はかの有名な13種の苗木を全て植え直すことを考えたのである。

「15年前から、グルナッシュの畑にシラーを植え始め、それを毎年繰り返し行いました。独自の多様さという所に立ち返ってみたいのです。シラーはアルコール分を少なくするが繊細さをもたらします。グルナッシュの間にムールヴェードルというような、白と赤を混合して植えることもしました。」と彼は語る。

今日の傾向は、地下深くに水を蓄えた土壌から生まれるムールヴェードル種によるものである。そこにサンソーやクノワーズといった品種も加わる。そしてまた、セレクション・マサールによりアペラシオンの基準に即したグルナッシュも復活の兆しが見えてきているのだ。
(訳者追記 ※セレクション・マサールとは、優良クローンぶどうだけではなく、野生品種を1つの区画に植え、色々なタイプのブドウ樹から様々なキャラクターを引き出す古来より伝わる伝統的な手法。)

 

La Revue de Vin de France n°585 2014/10 記事抜粋
ロベルト・ペトロニオ 著 (Roberto Petronio)
翻訳 橋井杏
www.larvf.com.

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